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027 「プレマックの原理」を意志決定に生かす

● 「プレマックの原理」

先延ばし癖の矯正について述べた文章のなかに、「プレマックの原理」という言葉を見かけました。

「プレマックの原理」は、心理学者デビッド・プレマックによって公式化され、こう述べられています。「高い頻度で起こる行動は、低い頻度の行動を強化することができる」。(1)

 引用した部分のすぐ後に、わかりやすい例が添えられています。
 コーヒーを一杯入れることは、あなたがよくすることだし、苦でもないとします。一方で部屋の掃除は、めったにしないし、あなたにとっては難しいことだとします。このとき「プレマックの原理」にしたがえば、「部屋の掃除の後でコーヒーを入れる」というルールを作ることで、掃除の頻度を高めることができます。Wikipedia(英語版)では、実生活でもっともよく使われるこの原理の応用は「アイスを食べる前にお野菜をぜんぶ食べなさい」である、としています。

 なぜ、「好きなことをご褒美にすれば、嫌なことでも習慣づけられる」というような表現ではないのか?他の情報源をあたってみたところ(2)、プレマックの実験がサルを使ったものであることに起因しているようです。プレマックは、実験室にボタンやレバーを並べておき、サルが自発的に起こす行動の頻度を測りました。その後、あまりしなかった行動(例:レバーを引く)をしないと、よく起こす行動(例:ボタンを押す)ができないように仕組んで再度測ってみると、前者の行動頻度が高まったそうです。サルに行動の好き嫌いを尋ねるわけにはいかないので、頻度の高い低いという表現になったのではないでしょうか。

 実験は自発的な行動を測ったそうですので、「高頻度の行動 = 好きな行動」と置き換えてもよさそうです。しかし「低い頻度の行動 = 嫌いな行動」ではないでしょう。嫌いな行動は、そもそもしないでしょうからね。とすると「好きなことをご褒美にすれば、嫌なことでも習慣づけられる」は解釈しすぎということになります。

 また、自発的な行動が対象であったということは、高い頻度で起こる行動なら何でも使えるというわけでもありません。「毎朝、イヤイヤだけど通勤するから、その前に運動しよう」というプランでは、プレマックの原理は働かないということです。これらを踏まえると、プレマックの原理を確実に理解するためには「行動」という言葉の前に(自発的な)を付けて、次のように理解しておけばよさそうです。

高い頻度で起こる(自発的な)行動は、低い頻度の(自発的な)行動を強化することができる

● 「プレマックの原理」を意志決定に生かす

 これらの知見を踏まえ、この原理を意志決定の質を高めるためにどう使えるかを考えてみました。

 われわれは、つい「決め急ぎ」「決め打ち」をしてしまいます。後から振り返ってみれば「ちょっと気を配っておけば……」というところに気が回らず、偏った決め方をしてしまうことがあります。

 そこで、こんな感じで自分を「しつけて」みてはどうでしょうか。

  1. 個々の選択を振り返り、自分の決め方をメモしておく。たとえば、
    • 人にアドバイスを求めたか、独断で決めたか
    • 複数の選択肢を考えてから選んだか、そうでないか
    • 評価基準を作って選択肢を絞り込んだか、そうでないか
    • 直感で決めたか、そうでないか
    • リスクや副作用を考えて決めたか、そうでないか
    • 長期的な影響を考えて決めたか、そうでないか

    などなど。しばらくメモを続けていると、「こういうことも考えておけばよかった」という後悔の数だけ、決め方のバリエーションも出てくると思います。

  2. 自分の決め方のクセを評価する。「よく採用しがちな決め方」(高い頻度で起こる行動)と「あまりできていないが、強化していきたい決め方」(低い頻度の行動)を洗い出す。
  3. 最後は「よく採用しがちな決め方」で決めることを自分に許しつつ、その前にかならず「強化していきたい決め方」を試す。たとえば「何かを決める前には、かならずA案B案C案を書き出すこと!」あるいは「何かを決める前には、かならずメリット/デメリットの表を作ること!」という具合です。

われわれの日常は選択の連続です。ランチの決め方など小さい選択にも、われわれの癖は表れます。試す機会はたくさんあります。


(1) マイケル・R. エデルシュタイン ほか『論理療法による3分間セラピー 考え方しだいで、悩みが消える
(2) たとえば「プレマックの原理」 – カウンセリングオフィスクローバーリーフ・臨床心理士のブログ。