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090 どんなに不連続に思えても、未来と現在はつながっている

●最悪の未来は描きやすい

「この会社が5年後も存続していると言い切れる人?」

と、リーダー研修などで聞いてみます。誰も手を挙げません。東日本大震災の後はなおさらです。そこで

「天災などで経営資源が直接かつ一気に損なわれるケースは除きます(1)。たとえばメディアが『あそこは倒産するべくして倒産した』と評する状況が想定できない人?」

と聞いても、やはり、誰も手を挙げません。

当然ですよね。日本有数の証券会社であっても、世界最大級の会計事務所であっても、廃業はあり得ます。天災がなくても、5年間もあれば何だって起こり得ます(2)

次に、

「5年後の倒産の原因として、もっともあり得そうなもの」

を考えてもらいます。

これも、いろいろ出てきます。主力事業が衰えてしまい、それを代替する新事業も育たなかったというのが定番です。「経営者の不祥事」とか「経営者の失言」とか、最近目立った事例が脳裏をよぎったのかな、と思われるような原因も出てきます。

本題はここからです。

「どんなに不連続に思えても、未来と現在はつながっている。この会社がいま挙げてもらったような原因で5年後につぶれる可能性があるなら、その予兆は、今・ここ(この会社)にあるのではないか?それは何か?」

と考えてもらいます。それが見えれば、今何を考えるべきかは自ずと明らかになるはずです。

これまで予兆を見つけられなかった人はいません。これも実は当然の話で、「こういう原因で倒産するかも」と思うからには、当人の意識のどこかで、その周辺に対してアラームが鳴っているのです。

●最善の未来は描きにくい

これとまったく同じことを、今度は倒産のような最悪のケースでなく、最善のケースでやってみます。

ところが面白いことに(と言うのは不謹慎かもしれませんが)、こちらは難しいのです。はるかに難しい。

「5年間あればどんなことでも起き得る」はずなのに、5年間で事業規模が10倍になるとか、世界中から賞賛される企業になるとか、そもそも起き得るとは思えないのです。

それでもワークを先に進めます。描けるだけの5年後の最善の状態を描き、それができた主原因を考え、そのタネをいまの組織の中に探します。そして最善の5年後を実現するために、今できることを考えます。

どこかの時点であるチームが突き抜けてくれると、どんどんアイディアが膨らみます。そうでないと、いかにも現有の経営資源でできそうなビジョンしか出てこないこともあります。

この一連のワークは、もとは別の目的で考案したのですが、さまざまな学びを生み出しました。なかでも大きな発見は「われわれが今日することに制約を課しているのは、保有している資源というより想像力である」ということです。


(1) もちろん天災やテロなどあらゆる災害を想定すべきではあります。ここで言っている「経営資源が直接かつ一気に損なわれるケース」とは、社屋が一気に倒壊して全社員が死亡するといった、おそらくは事業の継続をあきらめなければならないケースです(部署を地域や大陸をまたいで分散できる大企業を除いては、取れる対策にも限界があります)。

(2) わたしの経験は企業に限られています。地方自治体あるいは国家の運営を担っているリーダー層であれば、答えのバリエーションは増えるかもしれません。